庇、読み方分かりますか?ひさし、と読みます。家づくりを考えるときに、庇の重要度ってあなたにとって何番目でしょう?・・・はい、そうですね、ほとんどの人にとって、何番目かも分からないくらい重要度低めの庇。けれど建物にとって庇の持つ役割はとっても重要!そして、知らずにいると損をする建築のルールも存在します。今回は、知っておくと得しかしない庇のお話です。
目次
庇(ひさし)と軒(のき)は別物です。
庇は、窓や玄関扉などの開口部の上に取り付けられる、小さな屋根のようなイメージです。「それって軒(のき)じゃないの?」と思う方もいるかもしれませんね。軒は、屋根が外壁の外まで伸びた“屋根の一部”です。一方、開口部の上の“外壁”から伸びているのが庇。
梅雨や秋雨など、季節の変わり目に雨の多い日本では、古くから取り入れられてきた建築様式の一つです。その特徴について、まずは機能性から紐解いてみましょう!
庇の機能性
太陽光を上手に室内に取り入れる
太陽光の活用は、庇の最も重要な役割です。太陽光をただ“遮断する”のではありません。“活用する”というのがポイント。
具体的には、夏の暑い直射日光は遮り、冬の暖かな日差しは取り込む、ということです。夏と冬では、太陽の昇る高さが違います。このことを利用して、夏、高いところから降り注ぐ日光は庇でシャットアウト。冬の低い太陽の光だけ取り込むのです。
エアコンを使わずに室内温度を調整する、先人の知恵ですね。
もちろん、ただ庇をつけただけではこのような効果は得られません。家を建てる土地の条件に合わせて、庇の長さ・角度を検討する必要があるので、その辺はハウスメーカーや建築事務所に相談してくださいね。
フローリングや家具の色あせ・日焼けを防ぐ
夏の強い日差しを遮ってくれますので、室内のフローリング、家具、ファブリック、畳の色あせ・日焼けも防いでくれます。
人によっては、そうした経年変化も楽しみの一つとして捉えられるでしょうが、そうでない場合は庇は強い味方になってくれます。
雨の吹き込みを防ぐ
窓に庇がなければ、ちょっとした雨でも室内に雨水が吹き込んでしまいます。近年ではゲリラ豪雨も頻発していますし、雨が振りやすい&天気の変わりやすい梅雨~夏~秋雨の時期は、窓を開けっ放しになんてできません・・・。
それって、1年の半分近く、雨のことを気にかけてないといけないってことですよ!これは面倒です。その点、庇があれば安心。理由は、言わずもがなですね 笑
外壁や窓、玄関の防汚機能
日々、雨風にさらされている外壁や窓、玄関を、汚れや劣化から守るのも庇の役目。特に鹿児島では火山灰が降り注ぐこともありますよね。雨、土埃、火山灰。庇があれば、そうした汚れが直接外壁や窓、玄関についてしまうのを軽減することができます。
庇のデザイン性
次は、庇の持つデザイン的な魅力を見ていきましょう。
プロポーションが良くなる
1階部分に長い庇を設けると、家全体の重心がグッと下がります。すると、家のプロポーションに安定感が加わり、外観が落ち着きのある印象になります。
縁側・テラスと組み合わせて、雨さえも楽しむ
アウトドアリビングという考え方が広まり、縁側やテラス、ウッドデッキを希望する方も増えています。生活空間を、お庭にまで拡張して、開放感を楽しむ。わざわざキャンプに行かなくても、家にいながらアウトドアライフを楽しめたら、それはそれは素敵でしょう!夏の夕暮れに、ウッドデッキに椅子を出して早めの晩酌なんて、想像しただけで酔っ払いそうです。
けれど問題が一つ。雨の日は?真夏のカンカン照りの日は?ウッドデッキだけでは、流石に快適とは言えません。そこで登場するのが、そう!庇です。
縁側やテラス、ウッドデッキと合わせて深めの庇を設えることで、生活空間の拡張性はより高まります。よほどひどい雨ではない限り、雨でも外で過ごすことができます。秋の長雨の雨音をBGMに、読書にふける。そんな晴耕雨読の生活も魅力的じゃないですか?
庇のデメリット
庇を取り入れるときには、気をつけたい注意点も存在しますので、最後にご紹介します。
外観をスッキリさせるには、設計者の手腕が必要
もし、あなたがキューブ状のシンプルでクールな外観の家を望んでいる場合、庇は真逆の存在です。外壁から飛び出すわけですから。下記の「雨どいをどうするか問題」も相まって、理想の外観に仕上がらない可能性が高くなります。
もちろん、庇を設けながら、“シンプルでクール”な印象を損なわないデザインも可能でしょう。しかしそれは設計者の腕しだい。ハウスメーカーや設計事務所自体の得手・不得手もあるでしょう。パートナーの見極めが重要です。
雨どいをどうするか問題
庇を設ける場合には、雨水をどうするかも考えなければなりません。玄関のように人の出入りが多い場所には、やはり雨どいを設けるべきです。でも、雨どいって普段はあまり意識していませんが、よくよく見ると結構目立つんです。
造形的にスッキリとしたデザイン仕上げるためには、どんな庇にするか?だけでなく、この庇にはどんな雨どいが、どの位置につくのか?まで考える必要があります。
建築面積だけじゃなく、延べ床面積に含まれる場合がある
これが最後の爆弾です!タイトルにも上げていました建築面積問題。長い庇は、先端から1m引いた部分までの庇面積を建築面積に参入することになっています。
問題は、税金にも関わってくる延べ床面積。通常は、庇面積は延べ床面積に参入されません。しかし!
「自転車置き場などの室内的用途(生活上又は部品の格納の目的で雨露をしのぐ用途)のある場合は、建築面積と同じ方法で1階の床面積に参入される」んです・・・。
プランの計画中だったり、提案をもらっている最中の方はご注意ください。将来的な支払いに関わることなので、ちゃんと確認してみることをおすすめします。
いかがでしたか?
けして目立つタイプではないですが、機能的にも外観のデザイン的にも、とっても重要な役割を果たしている「庇」。家づくりでは、ぜひぜひ、彼(?)の能力にも目を向けてくださいね。