“実寸試作”とは……住まいの“核”となる部分は「実物大モックアップ」をつくり、お施主様に体感・検証してもらう、ベガハウス独自の取り組みです。ご要望をヒアリングするだけでなく、お施主様も積極的に家づくりに参加していただき、一生に一度の思い出を一緒につくります。
今回の実物試作は?
今回の実寸試作を担当した、テクニカルの田村です!
よろしくお願いします。
今回は、I様邸のリビングに置く造作タタミソファを制作しました。I様ご夫妻がもともと持っていた“囲炉裏テーブル”に合わせてリビングを提案するにあたり、アイデアとして浮上したのがタタミソファ。来客も多いということで、その人数に合わせてレイアウトを変えられるよう、移動式を考えました。
造作タタミソファは、ロの字の木枠に半畳のタタミをはめ込んだものを複数組み合わせてつくります。これまでベガハウスではたくさんの造作ソファを手がけてきましたが、タタミソファは初の試み。どのように製作していくか、実寸試作にて検証しました。
造作タタミソファを検証した理由は?
1つ目は、I様ご夫妻がご両親からいただいたという“囲炉裏テーブル”をリビングに採用するにあたり、ソファの高さを合わせる必要があったからです。
2つ目は、造作タタミソファは900mm角の正方形を想定していましたが、この大きさがベストか、何個必要かを検討したかったからです。また、日常で使いやすいレイアウトと、来客時を想定したレイアウトも試してみないと分からないことが多く、検証するに至りました。
5つの検証のポイント
- 立ったり座ったりしやすい高さ
- 囲炉裏テーブルと合う高さ
- 配置パターンと造作タタミソファ1個あたりのサイズと個数
- 固定するところと動かせるところ
- タタミの色&背もたれの色や素材
第一にソファはくつろぐ場所。立ったり座ったりしやすくなければなりません。ご主人と奥様がそれぞれ座ってみて心地よい高さを探っていきます。また、囲炉裏テーブルを囲んで読書や仕事などをすると想定し、座ってみて心地いい高さがどこなのかも検証。膝やつま先がテーブルに当たらないか?なども細かくチェックします。
さらに、900mm角の造作タタミソファの実物大モックアップ(8個)のレイアウトを変化させながら、一個あたりのサイズと個数を検証。固定するものと可動できるものも、活用シーンを想定しながら話し合いました。可動式のものは床材を傷つけず、軽い力で動かすことができ、かつグリップが効く(タタミソファに座っているときに動かない)ような機構を検討します。
タタミの色、背もたれの色や素材も検証ポイント。オークの床材との相性など、純和風ではなく、リビングとトータルコーディネートされた絶妙な和モダンを目指します。
さらに、900mm角の造作タタミソファの実物大モックアップ(8個)のレイアウトを変化させながら、一個あたりのサイズと個数を検証。固定するものと可動できるものも、活用シーンを想定しながら話し合いました。可動式のものは床材を傷つけず、軽い力で動かすことができ、かつグリップが効く(タタミソファに座っているときに動かない)ような機構を検討します。
タタミの色、背もたれの色や素材も検証ポイント。オークの床材との相性など、純和風ではなく、リビングとトータルコーディネートされた絶妙な和モダンを目指します。
検証スタート
検証はベガハウスのスタジオにて。当日は、I様ご夫妻とお子さま2人もいらしてにぎやかに検討がスタートしました。
まずは、準備していた造作タタミソファの実物大モックアップに座ったり、立ったりしていただきます。この段階で「低いソファは落ち着けるけれど、使いにくそう」という意見が出ました。また「低いと囲炉裏テーブルとのバランスが悪い」という感想も。そこで、モックアップの高さを2cmずつ上げてみて、ベストな高さを見つけます。
来客時を想定して検証したことは、「炉を囲んだ配置の場合、最大何人まで座れるか」。具体的には、4~6人座れるかどうか確認しました。それからダイニングへの動線、寸法が確保されているかも検証。併せてタタミのサイズを確認しました。さらに布団を敷くスペースを確保できるかを検証し、タタミ横並び&炉を端に寄せる配置にすると、2.3mx1.8mのタタミスペースができることが分かりました。
引き続き、具体的な暮らしの所作をイメージし、検証を進めます。
「足をしっかり伸ばせるか」
「家族4人がタタミソファに集まっても窮屈ではないか」
「洗濯物を広げて、たたむことができるスペースがあるか」
「あぐらをかいてもタタミのサイズにゆとりはあるか」
なども順に検証していきます。
すると、窓側のタタミソファは固定で良いことがわかりました。
タタミのサイズについては、幅は一般的なタタミの寸法である900mmで大丈夫そうでした。長さは、「窓の割付との関係性」「横並びに配置した場合、炉も含めて全体で長方形になるか」「炉を囲む配置で窓側に座る人が2人のとき、畳の分割部分がくるか否か」なども検証していきました。
また、可動式のものはキャスター付きをイメージしがちですが、床を傷つけず手軽に動かすことができ、かつグリップが効くフェルトを検証。こちらを採用することにしました。
タタミの色は、標準は緑ですが、純和風の印象を避けつつ、オークの床材に合わせるため「トーンを落とした色にしたい」というご要望がありました。そこで、小麦色のタタミを採用することに。背もたれも色をメインに検討しましたが、高さとウレタンの厚さもチェック。背もたれ用のファブリックは何百種類もの生地見本からセレクトしました。色はリビング全体との調和のほか、窓にすだれが設置される予定でしたので、こちらとの相性も考えてベージュを採用しました
実物大モックアップ検証のまとめ
- 造作タタミソファは全部で5個
- サイズを3パターン用意
- リビングの窓と合わせてまとまりよく
- 囲炉裏テーブルを掘りごたつのように
- リビングとのトータルコーディネート
検証では、半間のサイズの造作タタミソファを8個用意していましたが、リビングのスペースをかなり占めるとわかりました。動線も確保しなければなりませんので、レイアウトを検証するなかでサイズのパターンを3つにし、個数も8個から5個に減らすようにしました。
なお造作タタミソファのサイズは、
(A)900×900mm/固定タイプ
(B)900×1432mm/固定タイプ
(C)900×1160mm/可動タイプ
の3パターンです。
なぜ長方形と正方形を交えたこの3パターンになったか?ポイントは窓でした。I様邸のリビングの窓(ソファの背もたれの上部)は、横長のHKKサッシというものを採用しており、ガラスが3分割になっていて真ん中に2本のサンが入っています。そこで、造作タタミソファもこの窓の3分割に合わせるご提案をしました。窓の下の3個は固定、2個を可動式にすることで日常にも来客時にも柔軟に対応することができます。もちろん窓との相性も良く、リビング全体もすっきりとまとまりました。
囲炉裏テーブルとの関係性ですが、ソファに座ったときに掘りごたつのように足が下せるほか、ソファの上であぐらをかいたときにもちょうどいい高さに調整できました。奥様からは「2WAYみたいでいいですね」と好評。旦那様からも「ゆっくりするだけでなく、仕事をするときにも最適な高さになりました」とおっしゃっていただきました。
和楽器のご趣味があったり、窓にすだれを採用したり、空間も和モダンがお好みのI様ご夫妻。空間全体のコーディネートに一体感をもたせるため、タタミは小麦色、ソファの背もたれのファブリックはベージュをセレクト。
実寸試作を行ったことで機能性と実用性、デザイン性のすべての面においてベストを探ることができたように思います。
エピローグ:こんなふうに仕上がりました!
以前の住まいでは活用できなかった囲炉裏テーブル。シーンに合わせてレイアウトを変えられる造作タタミソファによって、ようやく日の目を見ました。実は奥様はお仕事柄、デザインにも精通している方ですが、検証を終えると、「自慢できる空間ができそうです!」と喜んでくださいました。
今回の造作タタミソファはベガハウス初のチャレンジでしたが、検証を通して新たな経験が得られました。こうした造作ソファを求めるお施主様に、また別の素敵なご提案ができそうです。
では、次回の「実寸検証レポート」もお楽しみに。