暮らしを想い家づくりに取り組むベガハウスでは、家具も建築の一部だと考えています。そのため図面と間取りから家具の大きさや形状を決定し、詳細な設計をするテクニカルというスタッフがいます。
テクニカル部門では、より快適な暮らしに近づけるために、スケッチや図面だけではイメージが湧かない建築や家具を、実寸サイズで再現する「実物大モックアップ」を作り、お施主さまに体験・検証をしていただくことにしています。
今回はIさま邸で行った実物大モックアップについてです。
テクニカルの想い、暮らしのイメージが膨らむ提案
こんにちは、テクニカルの田村です。よろしくお願いします。
今回の実物大のモックアップ検証は、Iさま邸の造作ソファについてです。ご要望から提案、検証したことをご紹介していきます。
Iさまは、ご夫婦とお子さまの3人家族です。
家づくりのご要望は、豊かな自然の中でゆったりとした暮らしをすることです。敷地は、住宅街でありながら林に隣接した立地のいい場所。まずはプランナーがこの自然を暮らしに取り入れた間取りを作成します。
Iさま邸のリビングダイニングは天井が高く、開放感あふれる空間です。緑豊かな景色を取り込むため、林側には大きなFIX窓を設けています。芝庭へとつながる窓の前は畳スペースにするなど「くつろぎ」を考えた設計になっています。
私は、LDKの雰囲気がより伝わるようスケッチにおこし、家具の配置などをIさまに説明しました。林側の大きなFIX窓の下に造作ソファを置きましょうとお話したところ、ソファは横になりながらくつろげる大きさで、ご主人からは後頭部まで預けることができるハイバックソファにしたいというご要望をいただきました。
ソファの座り心地は、座面の高さや幅、背もたれの高さや角度によって大きく左右されます。さらに、Iさまご夫婦の身長差も考慮して、今回はソファのモックアップ検証を行うことに決めました。
ハイバックソファにもさまざまなデザインがありますが、その中で私がIさまにおすすめしたのが、1985年にデンマークを代表する家具デザイナー、ボーエ・モーエンセンがデザインしたデイベッド(サッカーソファ)から着想を得た造作ソファです。
このデザインの特長は、ヘッドレストが後頭部にフィットし快適に座れるだけでなく、取り外しができるので枕や肘置きとしても使用できます。また、持ち運びができるため、畳スペースでも使えます。この空間でのくつろぎの情景がイメージできたこともIさまにおすすめした理由のひとつです。
それぞれの「くつろぎ」を体現しながら行う検証について
検証を行う前に、さまざまなハイバックソファの写真を、Iさまにご覧いただきました。背もたれが大きなハイバックソファはボリュームがあります。Iさまご夫婦も「背もたれとヘッドレストが分離したソファのほうがスッキリとした印象になりますね」というお話になり、その使用感を体験してもらうために5つの検証を行いました。
- 座面の高さと奥行き
- 背もたれの高さと角度
- ヘッドレストの位置
- オットマンの高さ
- サイドテーブルの高さ
座面の高さは、ご主人にあわせています。ソファに座ったときの座り心地だけでなく、床に座りソファを背もたれにしたときや肘を置いたときなども検証して高さを決めました。座面の奥行きは、ソファで横になってくつろぎたいというご希望があったため、寝返りがうてる寸法に決まりました。
背もたれの高さと角度は、ヘッドレストの位置にあわせ検証しました。
背もたれとヘッドレストを同じ側面に設置した場合、先にヘッドレストに頭部があたってしまい、背中がフィットしないことがわかりました。
これにより、ヘッドレストより背もたれを少し前に出すことで、座るときに背中・頭部の順で自然とフィットするようにしています。寸法を微調整しながらIさまにあった位置や高さを決めていきました。
ヘッドレストの使用感については、ご主人は丸みがちょうど後頭部を支え「頭を預けられていいですね」と気に入ってくださいました。
奥さまのくつろぎスタイルは胡座をかく姿勢のため、頭の部分に特に必要なく、ヘッドレストは肘置きや抱き枕として使いたいと仰っていました。
オットマンは高さを上げ下げしながら検証しました。
ソファの座面と同じ高さにすると膝が伸びた状態になるため、少し低めにすることでより快適な姿勢になることが分かりました。
最後にサイドテーブルの使用用途の確認です。ヘッドレストが肘置きの代わりになるため、サイドテーブルには、お子さんがすぐに手にできるよう絵本を並べたいと奥さまよりご希望
がありました。そこからサイドテーブルの高さを決めていきました。
これらの検証でわかったことや寸法を基に、再度設計して建築を進めていきます。
かろやかに暮らす、調和のとれた空間に
それでは、完成を見てみましょう!
ご夫婦それぞれの検証を踏まえ、右側はヘッドレスト付きのデザインに、左側はヘッドレストなしにしています。座面の奥行きを深めに設定し、横になった際にも寝返りが打て、座ってもゆったりとくつろげるサイズです。
ヘッドレストは、壁に固定した皮のベルト2本にぐぐらせて使います。取り外しができるので、枕や肘置きとしても使えます。そして、リビングから小上がりで行ける書斎にも、腰にフィットする位置にベルトが設置してあるので、背もたれとして使用できるようにしています。サイドテーブルは座面と同じ高さに設置することで、美しいラインとスッキリしたデザインになりました。
内装は白の漆喰を採用し、床材にはパインを使用することで軽やかで心地よい空間を演出しています。家具には濃い色を取り入れることで、メリハリのある調和を生み出しています。
窓から見える緑の景色は絵画のようで、「豊かな自然の中でゆったりとした暮らし」を体現していただける空間になりました。
Iさまの暮らしによりあったソファにするためには、図面だけでは分からないことがあります。モックアップの作成には時間がかかりますが、暮らしに適したデザインをカタチにすることや新しいデザインを検証することができ、弊社らしい取り組みだと思っています。
なぜ、ここまで検証をするのかと思われるかもしれません。
ベガハウスは暮らしを建てているから。
それは社員全員が共通認識として持っていることです。
お施主さまとのお打ち合わせでは、どんなものがお好きか、現在どのような暮らしをされているのかなど、さまざまな角度から”お施主さまご自身のこと”を教えていただきます。そこから着想を得て、家具や素材、形状などをご提案しています。
ぜひ、ベガハウスにいらした際は、皆さまの暮らしを教えてください。
それでは、次回の実物大モックアップもお楽しみに。