“実寸試作”とは……住まいの“核”となる部分は「実物大モックアップ」をつくり、お施主さまに体感・検証してもらう、ベガハウス独自の取り組みです。ご要望をヒアリングするだけでなく、お施主さまも積極的に家づくりに参加していただき、一生に一度の思い出を一緒につくります。
今回Nさま邸の実寸試作を担当した、テクニカルの山野です!
よろしくお願いします。
目次
今回の実寸試作は?
今回はキッチンと、調理道具をしまう壁面収納を制作しました。奥さまが自宅で料理教室(https://r-chanoma.com/)を主宰されているので、キッチンは生徒さんが通う場所でもあります。調理器具もかなり多いです。
奥さまからのご要望は、“調理道具を見せる収納”。そこで、キッチンの壁面の活用をご提案ました。壁面の棚に置くもの、棚下にS字フックでかけるもの、キッチン下の棚にしまうものなど、どれをどのように収納するのか、キッチンの使い勝手とともに実寸試作を用いて検証することにしました。
キッチンと壁面収納を検証した理由は?
1つ目は、壁面の棚の奥行きを確認する必要があったからです。やかんやせいろなど、見せたいものをどこに何を置くのか考えながら、置くものにぴったり合う奥行きを検証します。
2つ目は、窓の高さ。この壁面には、調理しながら自然豊かな景色が眺められるよう、窓を設けるプランで進んでいました。そのため、収納とのバランスも取りつつ、奥さまがキッチンに立ったときの窓の高さも確認する必要がありました。
5つの検証のポイント
- 壁面の棚の奥行きと高さ、どこに何を置くか
- 棚下のフックに何をかけるか
- 壁面収納の窓の高さは?
- コンロやシンクの位置が適切か
- キッチンとダイニングテーブルとの距離は?
棚に置くもののサイズに合わせて奥行きを確認。料理教室で使用する調理道具の大きさや使用頻度を考慮しながら、収納する場所と取り出しやすさなどをチェックします。さらに、大量にある調理道具のすべてがきちんと収納できるか、収納量も確認します。
また、シンクやコンロの位置が適切かどうかも検証ポイントでした。実物大モックアップの“仮想キッチン”で、調理中をイメージしながら確認します。
それからキッチンとダイニングテーブルの関係性。キッチンのすぐ後ろに作業台を兼ねたダイニングテーブルを置く計画だったので、キッチンで作業しているときにダイニングテーブルが近すぎて動線が重ならないか、人がスムーズに通れる距離かも、実際にモックアップで検証します。
検証スタート!
検証当日、具体的な検証のため、調理器具や食器などをできるだけ多くご持参いただきました。まずは、調理器具をすべて広げて、モックアップの壁面収納に置いていきます。大きさや使用頻度、分類などを考えながらどんどん並べてみます。調理器具をすべて収納してみると「なんだか圧迫感があるね」という声も。
棚下にはコの字型のステンレス製の金物を取り付け、そこにS字フックでおたまやざるなど、かけられる調理器具を引っかけていきます。もともとNさまがお住いだったマンションでも「吊り下げ収納」を活用されていて、使い勝手の良さは折り紙つきでした。調理器具の量をあらためて確認し、吊り下げた器具が重ならないかも検証します。棚下は窓になる想定だったので、吊り下げる器具の量に合わせて窓サイズも話し合いました。
窓の外は豊かな田園風景が広がっています。この借景を調理しながら眺めてもらえるよう、奥さまの目線に合わせて窓の高さを決めました。
シンクやコンロの位置は、コンロ前に立って料理をつくる場面や、シンクで食器洗いをしている場面など、具体的に動いてみることで、シンクとコンロ、作業スペースの最適な位置が見えてきました。これらの位置が把握できたことで、調味料類をどこに置くのが良いのかも確認できました。
実物大モックアップ検証のまとめ
今回の決定事項
- 壁面の棚の奥行きを段ごとに変える
- 棚下のフック収納と目線に合わせた窓の位置・サイズ
- キッチンは向かって左からコンロ・作業スペース・シンク・作業スペースの並びに
検証では当初、壁面の棚の奥行きはすべて同じサイズでしたが、実際に調理器具を収納してみるとかなり圧迫感があったので、3段の棚の奥行きをそれぞれ異なる長さにすることに。決定した奥行きは、上から33cm、25cm、25cm。上段から徐々に奥行きを狭くすることで、圧迫感を軽減しました。棚を横から見たときも斜めのラインが美しく、スッキリした印象になりました。
棚下に吊り下げる器具の量を把握し、外の景色が眺められる目線の高さを確認したことで、窓のサッシのサイズは縦75cm×横2m55cmに決まりました。縦幅はより広く取ることもできましたが、「シンクに調味料(一升瓶)を並べておきたい」という奥さまのご要望もあり、その分を差し引いた前述の縦幅に落ち着きました。
キッチンは、検証前は向かって左からコンロ、作業スペース、シンクという並びでした。ですが調理のシミュレーションをしてみて、「シンクで食器を洗ったあとに一時的に置くスペースが欲しい」という声があり、シンクの右側に作業スペースを増やしました。
実寸試作を行い、使い勝手が良いキッチンと、たくさんの調理器具を美しく・使いやすく・しまいやすい壁面収納を見極めることができました。
エピローグ:こんなふうに仕上がりました!
料理教室を主宰する奥さまの調理器具は、一般家庭よりかなり多く、どのように収納すればいいのか悩みました。検証当日はNさまご家族と一緒に、一つひとつ課題を解決していき、使いやすい壁面収納を実現することができました。
調理器具のどれをとってもお施主さまにとってこだわりと愛着のあるものばかりでしたので、これらを美しく見せる収納にでき、使い勝手のよいキッチンが完成したときは感無量でした。
お引き渡し後は、もともと家具職人をされていたご主人が、キッチンにピタリと収まる引き出しを制作されたりとさらにパワーアップしているようで、次回伺うのが楽しみです。料理教室で訪れる生徒さんからの感想もうかがってみたいですね。
ここまでお読みくださり、誠にありがとうございました!
次回は、テクニカル・白澤さんとKさまによる「ダイニングテーブル一体型の造作キッチン」の実寸試作レポートをお送りします。
お楽しみに〜!