新築を建てるとき、最初から造園までをきちんと視野に入れて考える方は、そう多くありません。しかし、四季を感じられる庭は、暮らしにスパイスを与えてくれる、家には欠かせない大切な要素です。ということで、今回の記事では、造園の基本的な考え方や、豊かな庭づくりのポイントなどをご紹介しましょう。
目次
そもそも造園とはどのようなもの? 庭づくりの基本的な考え方とは?
造園とは、庭をつくることを指します。ただ植物を植えるだけでなく、庭の空間をつくりあげることを意味します。家を建てるときには、建築基準法という法律に基づいて設計しますが、庭づくりにおいては法律的な制限はありません。言うならば勝手にできるものです。
しかし、実際にはご近所の方々の目にも触れますし、知らずに成長スピードがはやい木を植えてうっかりお隣の敷地にまで伸びてしまうと、トラブルの原因にもなりかねません。そこで、造園には「半公共」という意識をもっておくことが大切です。まずは、自分たちも近所の人たちにとっても心地よい庭をつくる、という気持ちが根底にあるといいですね。
お手入れできるキャパシティを超えない庭づくりのススメ
美しい庭をキープするには草刈りなどのメンテナンスが必須です。だからこそ、メンテナンスが可能な範囲の庭づくりが前提になります。
とはいえ、植栽がゼロではさみしいので、ポイントはちょっとがんばればメンテナンスができる庭です。荒れ果ててしまっては半公共という意味ではNGですし、逆に後々の手入れが大変になってしまいます。ですので、自分たちの手でメンテナンスできる造園を目指しましょう。
家づくりの一部としての庭づくりとは?
新築の家を建てるとなった際、間取りや家事動線、機能性、デザインに意識が向きがちですが、どういう暮らしをしていきたいかと考えれば、庭づくりも同じくらい大切です。「家の窓からこういう植栽が見えるといい」「家に帰ってくるときに、玄関までの間に季節の香りを感じられる金木犀があるといい」など、具体的にイメージして造園するといいでしょう。
例えば、梅の木を植えたら実がなります。その梅を梅酒にしたり、梅シロップにしたりすることができます。これはベガハウスでは“時をためる”という考え方をしていますが、庭の梅の木が暮らしに豊かさをもたらし、彩りを添えてくれます。家づくりの一部として庭づくりをすると、その後の暮らしに思いもよらぬ喜びを与えてくれることがあります。
思いもよらぬ喜びは、自然だからこそなせる業と言っても過言ではありません。続いて、庭がもたらす“いいこと”についてご紹介します。
計算できないからこそ、自然は思わぬ喜びを与えてくれる
そもそも家は計算ずくで建てられるもの。太陽が出てくる位置や沈む場所も把握できますし、構造、温熱も計算できます。けれども植栽は、ある程度は木の種類によってどこにどれを植えると育ちやすいのかはわかりますが、すべてをコントロールできるわけではありません。
だからこそ、予想以上につぼみがついて花が咲き乱れたり、巣箱を置いたら美しい小鳥が集まってきたり、自然はすべてを計算できないゆえに思いもよらぬ喜びがやってくることがあります。それに、家のなかから緑が見えたり、外から帰ってくるときに草木があったりして、ふと自然を眺められる暮らしは心に余裕が出てくる。かわいい昆虫が来たり、鳥が来たり、コントロールできないからこそやってくる“いいこと”も楽しめます。
植物を育てるのが苦手な人でも庭づくりは可能?
植物は好きだけれど、育てることに苦手意識をもっている人も少なくありません。なかには、「植栽はいりません!」とおっしゃるお施主さまも…。しかし、ベガハウスでは造園をして一年後に「やっぱり植栽はいりません」という方は、これまでゼロ! どの方も庭に緑があって少しずつお世話をしていくと自然に緑が好きになるそうです。
おそらくこれまでの暮らしに緑が身近になかったことで苦手意識をもたれていただけで、身近に植物があれば、人は緑を愛でるようになる。もちろん少しのがんばりでメンテナンスができる範囲ということがポイントにはなりますが、人は自然とつながっていたいと本能的に感じているのかもしれませんね。
成功する造園、失敗する造園の違いや、いい庭づくりをする鍵は?
庭づくりに成功や失敗というのはありません。どんな庭にもよくも悪くも、虫は来ます(笑)
ただ、異常発生的に虫がつくのは植物が弱っているのが原因であることが多い。その場合は植物を元気にしてあげるように手入れをすればOKです。住宅地には不向きの植物というのはあります。例えば、どんぐりの木。とても成長が早いので住宅地では手入れが難しいことや、台風などで枝が折れたり、倒れたりしてお隣の家にも迷惑がかかる可能性があるためおすすめしません。
また、素敵な庭に仕上げるためには原風景に近いものを再現しましょう。というのも、敷地は人間が勝手に引いた線ですので、草木にやってくる虫や鳥には関係がありません。だからこそ、周囲の自然と住宅地のつながりを尊重して植栽をするといい効果が生まれます。
例えば、遠くに桜の木があって、家の庭にも桜の木があるとすると、窓から見渡したときに遠近感が生まれる。そうすると狭い家でも広く見える効果がありますし、庭にも立体感が出てきます。それから、植栽も遠近感が必要なので、お隣や少し遠くの公園などに季節を感じられる山並みや風景があれば、それをお借りして、敷地内の庭づくりにも活かす。借景という方法もイチオシです。
あとは、絵になるようにつくる窓、ピクチャーウィンドウという手法を使うのも◎。土地のいいところは取り込んで、あまり日常的に目にしたくないところはきちんとシャットアウトし、その場の力を最大限に活用したり、土地の魅力を発見したりする造園が“いい庭”の鍵となります。
住い手にとって豊かな庭をつくるためのコツ!
まずは、好きな花、好きな木、苦手な花、嫌いな植物の香りなどについて、家族で話し合いましょう。金木犀の香りひとつとっても好きな人とそうでない人がいますよね。ですので、まずは家族で話し合って、その内容を設計士さんに伝えます。そうすると設計士さんがご家族の要望を取りまとめて造園の計画を立ててくれます。
さらに、街を歩いていて「こんな緑がいいな」「この家の庭が素敵だな」というものがあれば、差し支えない場所であれば写真に撮って設計士さんにそれを見せるだけでも◎。もちろん生きものなので、できることとできないことがありますが、好みを伝えるのは大事です。
庭ができてからは毎日、植物を見てあげることが豊かな庭づくりのコツ。管理するという意味ではなく、毎日愛でていることで小さな気づきや発見があって求めずとも豊かさを感じられるようになってくるはずです。もちろん感じ方は人によって異なるものですが、それを家族で話したり、共有したりすることで暮らしの余白を楽しむための庭になってくれるでしょう。植物と縁がなかった人でも、庭を見る、眺めるから、いつしか“愛でる”になっていくのも自然のおもしろさでもありますね。
家の前の広い庭と、L字やコの字の家の中庭、植栽の手法はどう違う?
L字やコの字の家は、家の2方向から見えたり、3方向から見えたりします。かたや広い庭は家のなかの一方しか見えません。植物の葉は太陽が出てくる方を向くので、まずは植物が美しく見える見え方には気をつけましょう。
植える敷地は器ですので、そこにどういう風に植えるかというのが基本になります。大きい器と、小さいもっこりした器では、映える植栽の高さも違いますし、遠近感の演出も異なります。
それから広い庭では土地に高低差をつけて、庭が立体的に見えるようにするのもおすすめです。家から見える庭の一番遠い部分をもっこりさせると、地面に高さが出る分、見える緑の量が増え、平坦だと見える緑の量が減ります。そういった工夫で見え方を変えるのもテクニックのひとつです。
南国・鹿児島ならではの造園とは?
とても暑い、鹿児島の夏。エアコンで乗り切るのもいいですが、エアコンを最小限に抑えて外の風を取り込みたいという方もいらっしゃいます。実は、普通に窓から風が家に入ってくるのと、植物を通った風が入ってくるのとでは、温度が違うんですね。植物を通った風のほうが温度はグッと下がり、涼しく感じます。
そういった意味で、植物は管理する大変さもありますが、暑い鹿児島ではコンクリートを敷き詰めた土間より緑がいっぱいの庭があるほうが快適。それに庭に水を撒いて蒸発するときのにおいも楽しめます。
ズバリ! 造園の予算はいくら?
「ズバリ!」とは書いたものの、正直なところ、ズバッと言えないのが予算です。庭のつくりや植栽の数や種類で変わるので、あくまでも目安とお考えください。
約50坪の土地に住宅+造園を考える場合、予算は最低でも100万円はみておくといいでしょう。あまり庭を重視しない場合であれば、30万円ほどで庭づくりができるハウスメーカーもあります。
ひとくちに造園といっても家のまわりの環境や、住まい手が理想とするライフスタイルによってベストな庭づくりにも大きく違ってきます。まずは家族で話し合って、それを設計士さんに伝える。そして、庭ができあがってからが本当の庭づくりのスタートですね。ぜひあなたの暮らしを彩る、素敵な造園ができますように。