住まいの“核”となる部分は「実物大モックアップ」をつくり、お施主様に体感していただく本取り組み。ご要望をヒアリングするだけでなく、お施主様も積極的に参加していただき、一生に一度の家づくりの思い出を一緒につくっています。
この連載「実寸試作レポート」では、“家のどこを実物大モックアップにするのか?”、“どのように検証したのか?”などご紹介いたします。
今回の実物大モックアップは?
今回の実寸試作を担当した、テクニカルの山野です!
よろしくお願いします。
今回、実物大モックアップを制作したのは、ご主人が保有しているスニーカーコレクションをずらりと並べるための棚です。この棚は「スニーカーのための趣味室」に設置されるもの。
毎日レアスニーカーを探し求めてオークションサイトをチェックしているというご主人は、2023年現在で200足弱のスニーカーをコレクションしています。趣味室はこれらのスニーカーを思う存分愛でるための部屋で、飾ったり保管したりする棚の実物大モックアップ検証を行いました。
スニーカー専用棚を検証した理由
ひとつ目は、G様はご夫婦そろってファッション&スニーカー好きだということ。実物大モックアップを制作するならば、“ご夫婦でワクワクできるところ”をと考え、スニーカー用の棚が候補に挙がりました。
2つ目は、「200足弱あるスニーカーを、どう美しく見せるか?箱はどうするのか?立って眺めるか、座って眺めるか?」など、スニーカー用の棚は設計段階から検討の余地が多くあったこと。
そこで、G様邸では〈スニーカー専用棚〉を本気で考えてみることにしました。
5つの検証のポイント
- スニーカーの見せ方(角度をつけるか否か)
- 棚である必要があるか?(固定or取り外し式)
- スニーカーの取り出しやすさ、しまいやすさ
- スニーカーの箱はどう収納する?
- 棚の素材は何がいいのか?
スニーカーがずらりと並んでいる場所と言えば、スニーカーショップ。まずはモックアップを制作する前に、ショップへ足を運びどのような靴の見せ方があるのかリサーチしました。そして、棚にスニーカーが並んだときに美しく見える割付※を検討。そもそも棚は据え付けがいいのか、取り外しできたほうが便利ではないかなどもお施主様と話し合いました。
※割付(わりつけ)……全体をいくつかに分けること。ここでは、棚の高さや、ひとつの棚に何足並べるかを割り当てること。
また、スニーカーショップでは片足だけがディスプレイされていることが多いですが、今回のご主人の場合は、普段履いているスニーカーもあるため、棚からの取り出しやすく、左右そろえてしまいやすい点もポイントに。
コレクターにとって箱も大切なコレクションをなので収納スペースも検証します。さらに、空間のなかでの調和も大切に考え、素材もアクリル板と着色した木材板の2種類を制作して検証することにします。
検証スタート
実物大モックアップ検証は、大工さんが実際のG様邸の現場で行いました。つまり、部屋の広さを正確に把握できる環境。最初は壁面にスニーカーがプリントされた紙を貼って、スニーカーがどう見えるのかを視覚的にチェックします。G様ご夫妻は「わくわくするね!」と言い合っていました。
実際にスニーカーを何足収納するか、スニーカーを縦にするか、横にするかなど、収納量と見せ方のバランスを検証していきます。この段階で、「やはりスニーカーは両足をそろえて収納したい、取り出しやすいようにしたい」などの意見が出ました。スニーカーショップのディスプレイ棚との用途の違いが、この検証の段階ではっきり分かったように思います。
さらに箱は、棚の下の方に何個重ねられるかも検証しました。スニーカーコレクターにとっては、どんどん増えていく箱の収納は悩みのタネですので、箱の寸法を確認し、何個置くには何センチ必要かなども具体的に検討します。
最後に、棚の素材を変えてチェック。スニーカーが映えて、汚れにくくて掃除がしやすい素材はどれか、空間に合う素材はどれかなど、それぞれを考慮して検討します。お施主様からは「日常的にスニーカーを取り出したり、しまったりするのでタフな素材にしたい」という意見がありました。
実物大モックアップ検証のまとめ
- スニーカーを両足そろえられる奥行
- 空間にすっきりと収まる固定の棚
- 掃除がしやすく丈夫な素材にする
- 趣味が変わったときにも対応できる棚
- 棚は空間と調和するカラーにする
当初はスニーカーショップのようなディスプレイを重視した棚を目指していましたが、今回検証してみて両足をそろえて収納できることが必須条件だと分かりました。
最初は棚の奥行きを15cmにしていましたが、30cmにすることでスニーカーを両足そろえて置くことができ、縦にも横にも入れられることが判明しました。スニーカーを置く角度が自由に変えられることで、スニーカーを並べ替える楽しみもより増えますし、奥行きを深くしても空間をそこまで圧迫しないと体感できたのもよかったです。
また、実物大モックアップを部屋に入れたことで、「長さが2m以上ある棚を動かす頻度は低い」という結論に至り、固定式になりました。素材の検証では、アクリル板はほこりが目立ちやすく掃除が大変であること、趣味が変わったときにほかのアイテムを飾ったり収納したりしやすいことなどをふまえて、木材板に決定。
色はそのほかの内壁とも合わせて、ライトグレーにすることもスムーズに決まりました。スニーカーショップでは靴を目立たせることが第一ですが、長く住まう家ですのでスニーカー用の棚も合理性や調和も大事だとあらためて実感します。
エピローグ:こんなふうに仕上がりました。
「以前のお住いでは趣味室がなかった」とご主人。スニーカーを眺めるときは積み上げた箱からスニーカーを一足ずつ引っ張り出していたそうですが、実物大モックアップ検証をしてみて、「きっとこの部屋から出なくなるなあ」とおっしゃっていました。
ずらりと並ぶスニーカーコレクションを前に過ごす時間は、ご主人の至福のときとなりそうです。
今回のスニーカーのための棚は、スニーカーがしまわれたときの迫力を体感したり、箱の見せ方まで検証できたり大きな収穫がありました!
次回の「実寸検証レポート」もお楽しみに。