∴然
素材の気配を素直に感じる
ベガハウススタッフの家
はじまり
「素直な暮らし、深まる質」
家族の暮らしを、もっと健やかに、もっと心地よく。
家づくりをスタートさせた理由は、そんな、とてもシンプルな想いからでした。
住まいを整えることは、人生の質を整えること。
自分たちらしい暮らし方を追求し、生活の質を最大限に引き上げること。
それは、建築に携わる身として揺るぎない幸福であり、
自身の設計に向き合う上での、確かな「軸」となりました。
以前の住まいで過ごす中で見つめ直したのは、
居場所の在り方と、家族同士の適切な距離感です。
光の入り方、風の抜け、日々の家事動線。
そして、互いの気配を感じながらも個の時間を慈しめる、
つかず離れずの心地よい間隔。
一つひとつを整理し、自ずと心地よさが生まれる形へと再構築していく。
目指したのは、家族が自然体でいられることはもちろん、
気心の知れた仲間が、自然と集いたくなるような場所でした。
過剰なものを削ぎ落とした先に見えてくる、素直な暮らし。
そこには、飾らないからこそ生まれる、 静かな豊かさが宿ると信じています。
日々の営みを、本来あるべき姿へ。
そんな思いを体現した、一つの形です。
発想
「地形を、暮らしの起点にする」
前面道路の坂道、そして土地の高低差。
設計の出発点は、この起伏を平らに整えるのではなく、 地形そのものを「起点」として受け入れることでした。
この傾斜をどう使いこなし、この場所だけの必然性を描くか。
高低差がくれた、足元のゆとり。
道具を整え、車を停める。
土地がくれた余白を「遊びの起点」として転用することで、住まいの幅を足元から広げています。
傾斜が生んだ段差が、生活動線の心地よいリズムや境界を与えてくれる。
平面では決して得られない、暮らしの奥行きへと鮮やかに転用できました。
斜面にせり出す緑を、目の高さで感じながら歩くアプローチ。
玄関へと至るわずかな数歩は、ただの移動ではありません。
緑と視線が重なるその時間は、外の世界から気持ちを切り替え、心を住まいへと着地させるための大切な「余白」です。
たとえ「100点の土地」でなくとも、その不自由さを利点へと転用する発想があれば、それでいい。
この土地だからこそ生まれた奥行きが、住まいを慈しむ確かな理由になっています。
間取り
「
土地の個性を、
平屋のゆとりに変える
」
地形の起伏に寄り添い、L字に構える。
特別な囲いがなくても視線を自然にかわし、内側にはしんと落ち着いた時間が流れる。
土地の形に素直に向き合うことで生まれた、必然の配置です。
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玄関を開ければ、真っ先に目に飛び込む中庭の緑。
外から中へ、そしてまた庭へと視線が抜けていく。
そんな視覚的な奥行きが、何気ない毎日に心地よいリズムを与えてくれます。 -
LDKを「三角形」に繋いだのは、視線をどこまでも斜めに逃がすため。
同じ空間にいながら、つかず離れず、自分らしい居場所をそっと見つけられるような設計です。 -
庭と一続きのダイニングキッチン。
室内から、そのまま外へ。
準備を構えず「外で食べる」を愉しめる、気負いのない距離感を大切にしました。 -
この傾斜地で、あえて伸びやかな平屋に住む。
「オーバーハング」で建物を空中に突き出し、土地の制約を浮遊感と開放感へと転用しました。
そんな設計のひと工夫が、日々の営みをいっそう軽やかにしてくれると信じています。
土地の不自由さを、この場所でしか味わえない「ゆとり」へと読み替える。
その創意工夫こそが、平屋という選択に見出した本当の豊かさです。
着想
「空間の対比を、
心地よさに変える」
住まいの質を決定づけるのは、そこに意図された明快な「対比」にあると考えています。
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ボリュームの対比
玄関はあえて天井を低く抑え、そこから一気に視界が抜けるLDKへと繋ぐ。
この「圧縮と開放」の落差が、外の喧騒を忘れさせ、住まいに深く包み込まれる安堵感を際立たせます。 -
繋がりの対比
機能的に結びつくキッチンやダイニングに対し、リビングは段差や家具で緩やかに境界を引きました。
家族と同じ空間に身を置きながら、ふと個の沈黙に浸る。
つかず離れず、心のままに居場所を選べる自由を、設計のなかに描き出しました。 -
外の取り込み方の対比
庭へと地続きに開き、光や風を招き入れるダイニングに対し、リビングの窓は桜島を切り取るためだけに厳格に絞り込んでいます。
あえて壁を残し、光や情報を制限することで、空間に凛とした密度と陰影を宿しました。 -
素材と造形の対比
全体を構成する実直でラフな質感に対し、毎日手が触れるテーブルや、心安らぐ寝室には繊細な和紙を。
建築の精緻なラインと、ダイニングテーブルが空間の象徴となるような有機的な造形。
その質感の差異が、日々の何気ない動作に確かな愛着を育みます。
相反する要素を掛け合わせ、暮らしに深い奥行きを宿す。
均一な空間では味わえない、この家ならではの密度。
それが、この場所と暮らしから導き出した、一つの形です。
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鹿児島県鹿児島市吉野町付近
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