HinokinoHi


桧の滑らかな削りと、未加工のありのままの粗木。
相反する二つの表情が響き合い、凹凸が生み出す陰影が、日常の風景に熊野の森のような奥行きを刻みます。
開発の背景
熊野の森に足を踏み入れると、そこには澄んだ水と空気、
そして美しく管理された桧の山々が広がっています。
この圧倒的な自然の美しさと、現地で感じた清らかな空気を、どうにかして住空間に閉じ込めることはできないか?
そんな問いから、三重県熊野市の野地木材さんとの共同開発が始まりました。
3つの特徴
木目という壁を超える
木をふんだんに使った空間は心地よいものですが、一方で板目特有の力強い模様が重なると、どうしても主張が強くなり、空間に圧迫感が出てしまうことがあります。
「木をたくさん使いたい、けれど重苦しくはしたくない」
この矛盾を解決するために、板を削り、加工しながら理想の形を模索しました。
ある時、板に薄いスリットを入れた瞬間、主張しすぎていた木目がふっと消え、これまでにない洗練された表情が生まれたのです。
凹と凸 対比がつくるリズム
最大の特徴は、削り出された二つの表情のコントラストにあります。
・凹(へこみ): 繊細で美しい木目を生かした、職人の技が光る滑らかな仕上げ。
・凸(とつ): じっくりと天然乾燥させた、荒々しい挽き板のままの仕上げ。
これまでの木材加工では、いかに段差をなくし、表面を均一に綺麗に仕上げるかが「良し」とされてきました。
しかし今回、野地木材さんにお願いしたのはその真逆。あえて「粗木のままの味わい(ガサガサとした質感)」を残すこと。
刃物で綺麗に整えられた面と、ありのままの粗い面が隣り合うことで、そこに熊野の森のような深い陰影が宿ったのです。
光と共に変化する天井
天井は、壁や床と違って人が直接触れる場所ではありません。だからこそ、傷や汚れを気にせず、自由で大胆な表現が可能です。
朝陽が差し込む時、夕暮れの斜光、そして夜の柔らかな間接照明。
凹凸が光を浴びるたびに、天井に陰影と立体感を与えます。
時間の移り変わりとともに、空間の表情が刻一刻と変化していきます。
南九州の家づくりでは杉が主流ですが、熊野の桧は強度が非常に高く、香りが良く、格別の気品を持っています。しかし、その素晴らしい価値も、時代の変化とともに需要のあり方が変わってきています。 今回、野地木材さんと共に「木が持つありのままの味わい」という新しい価値観に光を当てたことで、これまでにない桧の使い方が提示できたと感じています。
熊野の森のありのままの姿が、住まう人の心に静かな平穏をもたらしてくれることを願っています。